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アイディール通信

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IKEAでホラー体験ができる? ゲーム内で他人の商標を使用する行為は商標権侵害になるのか

 先日、協力サバイバルゲーム「The Store is Closed」の開発を行っているJacob Shaw氏が、IKEAの代理人弁護士から本作品に関する停止通告書を受け取ったというニュースをみました。

  「The  Store is Closed」 は大型家具屋を舞台としたホラーゲームです。店舗外観は箱の形をした青い建物に黄色文字(STYR)が書かれています。黄色文字こそ違うものの、ぱっと見はIKEAです。また、ゲーム内には、IKEAの従業員が着用している黄色い衣服を着たゾンビが登場したり、IKEA製品に類似した家具等が登場するそうです。
 IKEA側は米国商標法等に違反していることを理由に通告書を送りました。IKEA側の要求は該当コンテンツに関する削除です。これに対して、Jacob Shaw氏は争いを避けるべくデザインの変更を行うようです。

 日本ではゲーム内における行為が商標法の問題になるのか?

 まず、商標権侵害の成立について考えます。
 商標権の効力は商標法第25条に規定されており、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。」と規定されています。つまり、登録商標を指定商品又は指定役務について使用した時に商標権侵害が成立します。指定商品又は指定役務は、出願人が願書に記載した商標の用途です。そのため、登録商標を使用したとしても、指定商品又は指定役務に対しての使用でなければ、商標権の効力は及ばないということです。
 なので、飲食業についてAという商標が登録されている場合、飲食業に対してAという商標を用いることは商標権侵害になる一方、飲食業以外の商品又はサービスにAという商標を用いることは商標権侵害になりません。このあたり結構勘違いされている方が多いのですが、商標登録すれば、その商標の如何なる使用態様も防げるわけではありません。

 今回のケースでいうと、IKEA側がゲームの提供に関する指定役務について商標登録を受けていなければ、商標権の侵害にはあたらないと考えられます。
 漫画とかでもよくみると思うのですが、マクドナルド等の有名なファストフード店を漫画内に登場させるとき、名称に若干の変更が加えられていますよね。本来的にはあれらもすべて登録商標の指定商品又は指定役務に触れていなければ商標権の侵害にはなりません。
 もっとも、商標権者としては、勝手に自社の名称が使われていることをよく思わない場合もあります。ブランドイメージを下げるような描写があった場合、商標権者としては放っておけませんよね。こういった場合は、商標法とは別に名誉棄損等の問題になってきます。そのため、漫画とかの描写では名称や図柄に若干の変更を加えて登場させるのが慣習となっています。