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アイディール通信

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PPAPの衝撃再び・・・

 「PPAP」というフレーズに対し、「PPAP」とは全く関係のない第三者が商標登録出願をした事件がありましたね。これに似た事件が再び起きてしまいました。
 みなさんは今使っている商品名がある日突然使用できなくなったらどうしますか?このようなことが世の中では実際に起きています。今回は、商品名(サービス名)に対する商標権の危険性について事例を用いて話していきます。

 Youtubeにおいて主に料理系動画を投稿している「くまクッキング」というチャンネルを知っていますでしょうか。くまクッキングは、約23万人(2021年10月29日現在)のチャンネル登録者数を誇り、Youtube業界においては有名といって差し支えないと思います。

 ところが、「くまクッキング」のチャンネル所有者である「くま子さん」とは全く無関係の第三者によって、「くまクッキング」という商標にかかる商標登録出願をされてしまいました。当該商標登録出願は、登録査定(特許庁における商標審査の合格)を受けているため、登録料を納付すれば出願した第三者の権利として商標権が発生します。

 この場合、くま子さんは、「くまクッキング」という名称を用いてYoutube活動を続けることはできるのでしょうか?

商標は早い者勝ちが原則

 商標登録は、早い者勝ちで優劣がつくことが商標法で規定されており、同じ名称について複数の出願がなされた場合は最も早く出願した人だけが商標登録を受けることができます。そのため、先にある名称を商標として使っていたとしても、その名称について後から第三者により商標登録された場合は、後から自分が出願したとしても商標登録を受けることができません。それどころか、先に商標を使っていた人がその商標を使い続けると、その人は、先にその名称を使っていたにもかかわらず商標登録を受けた第三者の商標権を侵害することになります。

 上記事例において、くま子さんは、2019年8月21日にくまクッキングのチャンネルを開設しており、商標「くまクッキング」について商標登録出願(出願日は2020年10月6日)をした第三者よりも前から「くまクッキング」という名称を使用していると考えられます(当該第三者がくまクッキングを使用しているかどうかは不明です)。

 しかし、くま子さんは、「くまクッキング」という名称について商標登録を受けておらず、第三者が「くまクッキング」の名称について商標登録出願し、登録査定を受けてしまうという事態が発生しました。そのため、くま子さんは、当該第三者により登録料が納付され、当該第三者の商標権が発生してしまうと、「くまクッキング」の名称について今から商標登録出願をしたとしても商標登録を受けることはできません。それどころか、くま子さんは、くまクッキングという名称を用いてYoutube活動を続けるとなると、商標登録を受けた第三者の商標権を侵害してしまいます。
 したがって、くま子さんは、「くまクッキング」の名称について、変更しなければならないという事態になる可能性があります。

名称変更のリスクは避けられます

 このように、商標登録は早い者勝ちという原則から、先に使っていた名称について後から第三者によって商標登録されることにより、名称変更を余儀なくされる事態は結構あります。名称変更を行うと、Webページ、店舗看板、名刺等の各種営業資料の全てやり直しとなってしまい、リブランディングにかかるコストは計り知れません。
 このような名称変更を防ぐためには、自分で決めた商品名(サービス名)について、商標登録に取り組み、自分がその商標を使用し続けられる状態を確保しておくことが重要です。この記事を読んでいただいたみなさんは、このような事態に巻き込まれる前に商標登録に取り組んでいただきたいです。