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任天堂が「ピクミンブルーム」の略称「ピクブル」を出願。なぜ?

 ピクミンブルームは、ナイアンティックと任天堂とが共同して開発した位置情報ゲームであって、2021年11月1日に日本でローンチされました。「ピクミン」は、任天堂のゲームソフトの中でも多くのファンを誇る人気シリーズです。「引っこ抜か~れて・・・あなただけに・・・ついていく・・・」というフレーズで有名な「愛の歌」を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

 前述のとおり、今回ローンチされたアプリの名称は、「ピクミンブルーム」です。任天堂は、「ピクミンブルーム」の略称と思われる「ピクブル」という商標について、ローンチ日よりも前の2021年10月25日に出願しています。2021年10月25日以前に「ピクブル」という略称が消費者の間で広く使われ、認識されているということはなかったと思われます。

任天堂が「ピクブル」という略称について商標登録出願をした理由

 任天堂が「ピクブル」という略称について商標登録出願をするに至った背景には、2020年12月25日に任天堂側の勝訴が確定した「マリカー訴訟」が関係していると考えられます。
 任天堂は、マリカー訴訟において、任天堂が販売するゲームソフト「マリオカート」の略称として広く認知されている「マリカー」を巡って、MARIモビリティ開発と争っていました。任天堂は、「マリオカート」という名称については商標登録を受けていたものの、「マリカー」という「マリオカート」の略称については商標登録を受けておらず、MARIモビリティ開発に「マリカー」という商標を登録されてしまいました。MARIモビリティ開発は、「マリカー」という名称を用いて、公道カートのレンタルサービス事業を営んでいました。結果的には、MARIモビリティ開発の行為は、任天堂の著名な略称を使用するものとして、不正競争防止法違反と認められています。

 MARIモビリティ開発は、「マリカー」という名称について、弁理士を通して商標登録出願をしていることから、任天堂が「マリカー」について商標登録出願をしていないことを知っていたと考えられます。仮に、任天堂が「マリカー」について商標登録を受けていたとすれば、MARIモビリティ開発は、任天堂の商標権に触れる可能性が高いと考えるはずです。

 したがって、任天堂は、「マリカー」という名称を最初から商標登録しておけば、「マリカー」の名称を不正に使用される事態を未然に防止することができた可能性があります。任天堂は高額な裁判費用を払わずに済んだかもしれません。また、商標登録は早い者勝ちなので、「マリカー」について任天堂が先に商標登録出願し、商標登録がなされることで、MARIモビリティ開発による商標登録を防止することができたともいえます。

 こうした背景から、任天堂は、「ピクミンブルーム」のローンチ前に、「ピクミンブルーム」の略称として「ピクブル」と認識されることを見越し、「ピクブル」の商標登録出願をするに至ったと考えられます。略称に対しても商標登録を受けているという事実が公になることで、当該略称の不正使用に対しけん制をすることができます。任天堂のピクブルにかかる商標登録出願は、マリカー訴訟と同じような事件が起きることを未然に防止する方策としては十分効果的であるといえます。